このたびは、日本経営工学会第30代会長就任に 際しましてご支援賜り、誠にありがとうございました.与えられました2年間の任期を皆様から頂戴いたしましたご支援にお応えすべく会長職を務めますのでよろしくお願い申し上げます.就きましては、会長就任に当たりまして5月16日総会時に申し上げました内容を以下に文章化させていただきます.
1.産官学の連携(アライアンス)の現状
経営工学分野における産官学の関係を個々に眺めてみると、官と産の関係に比べると官と学、産と学の関係の弱さが目立った状態でありました.2009年5月15日(金)にはFMES(経営工学関連学会協議会)が第3回経営工学100年周期という企画の下、日本大学経済学部7号館13階において行われました。元来FMESは、研究連絡委員会としての機能が中心の官と学の連携活動であり、長らくは科研費の配分という観点から個々の学会員とのつながりを保ってきました.FMESの活動はこれまでに25年の歴史があるものの、科研費の配分という機能を失ってからは個々の学会員との関係性は逆に弱くなりました.学と産についても、ここ4~5年は官からのさまざまな働きかけはあってカンフル剤的な効果があるものの、その関係は継続的な強さを見せるまでには至っていない状況です.
2.企業経営の観点からの問題点
企業経営は、現場と管理と戦略の階層構造によって成り立っています.従来、日本的経営は現場のパッションと管理のミッションの間をスパイラルな往復を繰り返すことによって効率的な経営ができてきました.しかし、今日の経営はこれまでさほど重視してこなかった戦略のウエイトを急速に増しています.すなわち、これからどうなるのかを無機質に予測するのではなく、これからこうあるべき、こうしたいというビジョンを掲げる戦略への取組みです.今日の企業経営は、研究-開発-事業化-産業化を見据えたビジョンとそれを実現するための現場のパッションをうまくマネジメントする適切なミッション作りが求められています.
3.これからのものづくり
われわれの学会も所属しております横幹連合(横断型基幹科学技術研究団体連合)は、2005年10月に「コトづくり」を旗頭に43学会を集めて、自然科学と並ぶ基幹科学を育成すべく立ち上がったもので、これからのものづくりの在り方を変えようといううねりの表れととらえることができます.ものづくりは製品を作る、製品づくりのメカニズムを造る、生産を支えるインフラを造る、顧客満足を得る価値を創るというように、ものづくりにおいて付加価値を生む領域はシフトして参りました.この流れは、ドリブンの対象がテクノロジー、エンジニアリング、スキルへとシフトしてきているともとらえられます.アップルコンピュータのスチーブ・ジョブズはスキルドリブンの経営者、マイクロソフトのビルゲイツはテクノロジードリブン経営者と思います.
4.第30期の学会運営について
このような背景のもとに、第30期理事会が掲げるビジョン、ミッションを明らかにし、会員の皆様からは勿論、広く社会からパッションをいただける学会運営を目指したいと思っております.
(1)ビジョン: 本学会は、「工学と経営の融合による価値創造」というキャッチフレーズを掲げて第28期からビジョンを説明してきました.今後も継続してこの方向性を堅持して行きたいと思っております.
(2)ミッション: 第28期は「社会に働きかける経営工学」、第29期は「経営工学100年周期」をおのおの学会のミッションとして掲げてまいりました.第30期はフレデリック・テーラーによる科学的管理100年周期が2011年へ2年と迫っていること、さらに2010年6月3日には学会創立60周年もその前年に控えていることもあり、29期に引き続いて「経営工学100年周期」を旗印に「産学」「官学」「学学」に関わる様々な連携活動を手掛けて行きたいと思います.
(3)アクション: 1911年F.W.テーラーによる著書「科学的管理の原理」出版を記念し、2008年から取り組まれてきた「経営工学100年周期」を引き継ぎ、(社)経営工学会が取り組むさまざまなシンボリックな行事を統一的に捉えてゆきたいと思います。30期の任期を迎える2011年春までを大雑把に捉えて次のような行事を通じて本学会のさらなる発展に弾みをつけたいと思っております.
2009年7月 |
第2回JIMA国際シンポジウム(経営工学100年周期事業) |
2009年11月 |
愛知工業大学 全国大会(経営工学100年周期事業) |
2009年12月 |
第3回横幹コンファレンス東北大学 |
2010年5月 |
日本経営工学会60周年記念事業への対応(経営工学100年周期事業) |
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日本大学 全国大会(経営工学100年周期事業) |
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新法人化への対応 |
2010年秋 |
全国大会(経営工学100年周期事業) |
2011年春 |
全国大会(経営工学100年周期事業) |
末筆ながら、皆様のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます.